目次
- 1. 相続土地を手放すには?相続放棄・仲介不要の買取・国庫帰属を条件で選ぶ
- 相続放棄と土地の売却では、手放す範囲が異なる
- 直接買取・仲介売却・国庫帰属を条件で比べる
- 期限と権利関係を先に整理する
- 2. 相続放棄は原則3か月以内|土地を処分する前に確かめたい条件
- 3か月はいつから数える?死亡日や土地を知った日とは限らない
- 売却や遺産の使い込みは、単純承認に当たることがある
- 調査が間に合わない場合と、放棄後に残り得る義務
- 3. 仲介不要で相続土地を売るなら直接買取|価格と引受条件を比較する
- 直接買取と仲介売却では、買主と価格の決まり方が異なる
- 買取可否は接道・境界・残置物・権利関係で変わる
- 査定額だけでなく、費用控除と契約上の責任を比べる
- 4. 買取価格がそのまま手取りになるとは限らない|相続登記から決済までの手順
- 売却準備から決済まで|名義と必要書類を整える
- 手取り額の計算例|決済時の受取額と税引後の金額を分ける
- 相続登記の期限と譲渡所得税|申告まで見据えて資料を残す
- 5. 売れない相続土地はどうする?国庫帰属・隣地への譲渡・寄附の条件を確認する
- 相続土地国庫帰属制度の対象を確認する|建物・担保権・境界の条件
- 国庫帰属の費用を調べる|審査手数料・負担金・事前整備を分ける
- 隣地への譲渡や自治体への寄附は受入条件と管理負担を整理する
- 6. よくある質問 (FAQ)
- Q: 相続放棄するか迷っている段階で、土地の査定を頼んでも大丈夫ですか?
- Q: 共有で相続した土地は、自分だけの判断で買取を依頼できますか?
- Q: 仲介不要の買取なのに、紹介料や事務手数料を請求されることはありますか?
- Q: 古い土地で購入時の契約書が見つからない場合、売却できますか?
- Q: 相続放棄が受理された後、草刈りを求められたら断れますか?
- Q: 相続した土地が農地でも、不動産会社に直接買い取ってもらえますか?
- 7. 最後に
- この記事のポイント

相続土地を手放したくても、土地だけを相続放棄することはできず、預貯金などを残したい場合は売却などを検討する必要があります。ほかの財産を相続する意思や土地の状態を整理すれば、相続放棄、仲介不要の直接買取、国庫帰属制度のどれが候補になるかを絞れます。さらに、売却価格だけでなく登記費用や税金を差し引いた手取り額で比較すると、負担を見通しやすくなります。相続放棄には原則として自分のために相続が始まったと知った時から3か月の期限があり、土地の処分が判断に影響する点にも注意が必要です。期限・引受条件・手取り額を軸に、選べる方法を見極めましょう。
相続土地を手放すには?相続放棄・仲介不要の買取・国庫帰属を条件で選ぶ
預貯金や自宅は相続し、不要な土地だけを手放したいなら、相続放棄ではなく売却などが候補になります。選び方の分岐点は「遺産全体を引き継ぐか」です。引き継ぐ場合は、土地の売却先が見つかるか、費用を差し引いて手元にいくら残るかを比較し、売却が難しければ国への引渡しも検討します。
相続放棄と土地の売却では、手放す範囲が異なる
相続放棄は、その相続について初めから相続人ではなかったものと扱われる手続きです。土地だけでなく、預貯金などの財産や借金も含めて判断するため、「管理できない土地だけを放棄し、現金は受け取る」という使い方はできません。一方、売却は、相続した財産のうち対象の土地を選んで進められます。
例えば、預貯金と遠方の更地が遺産に含まれ、借金の調査をしたうえで預貯金を引き継ぎたいと考えている場合は、更地の直接買取や仲介売却を比較するのが基本です。ただし、相続放棄の可能性が残っている段階で土地を売ると、相続を承認したと扱われることがあるため、先に遺産全体を引き継ぐ意思を固める必要があります。
直接買取・仲介売却・国庫帰属を条件で比べる
相続土地を引き継ぐ場合の選択肢は、売却代金を得る方法と、費用を負担して土地を手放す方法に分かれます。土地の状態と希望する時期に照らして、次の違いを整理すると候補を絞れます。
- 直接買取:不動産会社が買主となる方法です。仲介不要で進められますが、買取対象や価格、引渡し時期は会社の判断と土地の条件によります。直接契約なら仲介手数料は不要でも、登記などの費用は別に検討します。
- 仲介売却:不動産会社に買主探しを依頼する方法です。提示された買取価格に納得できず、販売期間を確保できる場合の比較対象になります。ただし、希望価格で売れる保証はなく、成約時には原則として仲介手数料がかかります。
- 相続土地国庫帰属制度:相続などで取得した一定の土地を、審査を経て国に引き渡す制度です。売却代金は得られず、審査手数料や承認後の負担金が必要です。建物がある土地や境界が明らかでない土地などは対象外となるため、売れない土地を無条件で引き取ってもらえる制度ではありません。
比較する際は、売却価格だけでなく、登記・測量・撤去などの必要費用と、発生する場合の税金を差し引いた見込額を使います。国庫帰属は手取りを得る選択肢ではないため、支払う費用と今後の管理負担を比べる位置づけになります。
期限と権利関係を先に整理する
最初に控えるのは、自分のために相続が始まったと知った日です。相続放棄は原則としてその時から3か月以内の申述が必要で、売却査定を待っているだけでは期限は延びません。放棄するか判断できない場合は、売却交渉より先に家庭裁判所の手続案内や法律専門家への相談で対応を整理します。
そのうえで、遺産と借金の一覧、登記事項証明書で分かる名義、ほかの相続人・共有者の有無、建物や境界の状況をまとめます。共有地全体の売却には原則として共有者全員の合意が必要です。この情報をそろえて買取・仲介の条件を取り寄せ、国庫帰属を検討する場合は法務局の相談窓口で対象要件を確かめれば、実際に選べる方法を比較できます。
相続放棄は原則3か月以内|土地を処分する前に確かめたい条件
相続土地について相続放棄を考えている場合は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する必要があります。通常は、死亡の事実と、それによって自分が相続人になったことを知った時が起算点です。土地を売却すると放棄できなくなる場合があるため、処分する前に、期限とこれまでの行為を整理してください。
3か月はいつから数える?死亡日や土地を知った日とは限らない
この3か月は「熟慮期間」と呼ばれ、遺産や借金を調べて、相続するか放棄するかを判断するための期間です。死亡日に自分が相続人になったことを知っていれば、通常はその時から数えます。土地の存在を後から知っただけで、当然に期限が数え直されるわけではありません。
例えば、父の死亡から1か月後に初めて死亡の連絡を受け、その時に自分が相続人であると知ったと仮定します。この場合、原則となる起算点は死亡日ではなく、連絡を受けて知った時です。連絡メールや通知書など、知った時期を説明できる資料を残しておくと、申述時の事情説明に役立ちます。
判断が難しい場合は、次の条件を整理して家庭裁判所の手続案内や弁護士への相談につなげます。借金が判明した日だけで期限を判断しないことがポイントです。
| 条件・状況 | 確認先・資料 | 注意点 |
|---|---|---|
| 死亡と自分が相続人になったことを知った | 親族からの連絡、戸籍、通知書 | 原則として、その時から3か月以内に申述する |
| 先順位の相続人の放棄で自分が相続人になった | 先順位者への照会、放棄に関する通知や資料 | 死亡を知った日だけでなく、自分が相続人になったと知った時を整理する |
| 調査が終わらず判断できない | 管轄の家庭裁判所 | 熟慮期間内に期間伸長を申し立てる。自動的には延びない |
| 3か月経過後に借金などが判明した | 請求書、財産調査の記録、弁護士 | 例外的に放棄が認められる余地はあるが、知らなかった事情などの個別判断になる |
「遺産はないと思っていた」という場合でも、期限後の申述が認められるとは限りません。何をいつ知り、なぜそれ以前に財産や債務を把握できなかったのかを、資料とともに説明する必要があります。
売却や遺産の使い込みは、単純承認に当たることがある
相続財産を処分すると、財産と債務を引き継ぐ意思を確定したものとして扱う「法定単純承認」に当たり、相続放棄ができなくなることがあります。相続土地の売却や、亡くなった人の預貯金を引き出して自分の生活費に使う行為は、特に注意が必要です。
仲介不要の直接買取でも、この扱いは変わりません。査定を依頼することと、売買契約を結んで土地を処分することは区別し、放棄の可能性が残る間は契約締結や代金の受領を先行させないようにします。
一方、財産の価値を維持するための保存行為は、通常、処分とは区別されます。ただし、工事や支出の目的・規模によって判断が分かれるため、「管理のためなら何をしてもよい」とは考えず、実施前に具体的な内容を弁護士へ伝えて判断を求めるのが安全です。
調査が間に合わない場合と、放棄後に残り得る義務
土地以外の財産や借金の調査が終わらない場合には、家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てる方法があります。調査が必要な理由と進捗を整理し、熟慮期間が過ぎる前に手続きを取ります。延長の可否や期間は裁判所が判断するため、相談しただけで期限が止まるわけではありません。
また、相続放棄をすると、後順位の親族が新たに相続人になる場合があります。裁判所からその親族へ当然に連絡が届くとは限らないため、関係する親族へ放棄した事実を伝え、申述受理通知書などを保管しておくと、その後の確認に役立ちます。
放棄した時点で土地を現に占有していた場合には、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、自分の財産と同一の注意をもって保存する義務が残り得ます。相続財産清算人は、相続人がいるか明らかでない場合などに家庭裁判所が選任し、遺産を管理・清算する人です。放棄すれば直ちに土地を放置できるとは限らず、占有の実態と引渡し先の有無を分けて整理する必要があります。
仲介不要で相続土地を売るなら直接買取|価格と引受条件を比較する
相続土地は、不動産会社自身が買主になる「直接買取」なら、仲介不要で売却できます。ただし、すべての土地が買取対象になるわけではなく、提示価格や契約できる時期も土地の状態と会社の判断によって変わります。相続放棄ではなく売却を選ぶ場合は、仲介売却との違いを押さえ、買取価格と引受条件をセットで比較するのが判断の軸です。
直接買取と仲介売却では、買主と価格の決まり方が異なる
直接買取の買主は、査定を依頼した不動産会社です。一方、仲介売却では、不動産会社が購入希望者を探し、売主と買主の契約を取り持ちます。直接買取なら購入希望者を募集する工程を省けますが、会社による現地調査や権利関係の確認は必要であり、短期間での契約・入金が保証されるわけではありません。
買取価格には、会社が取得後に負担する整備費用、再販売までの保有リスク、利益などが織り込まれるため、仲介で売れる価格より低くなる傾向があります。ただし、仲介でも希望価格で売れるとは限りません。価格を優先して買主を探す余裕があるのか、価格を抑えても引受条件を明確にしたいのかで、向く方法は変わります。
売主と買取会社が直接契約し、仲介会社が入らなければ、仲介手数料は発生しません。ただし、「買取対応」と案内する会社でも、実際には別の買主を紹介する場合があります。問い合わせ時に「御社が売買契約上の買主になるのか」「仲介手数料や別名目の費用はあるのか」を尋ねると、取引の仕組みを区別できます。
買取可否は接道・境界・残置物・権利関係で変わる
買取会社は、取得後に土地を利用・再販売できるかを判断します。道路への接し方、隣地との境界、廃材などの残置物、共有者の有無は、買取可否や価格に影響する主な条件です。建築基準法上の道路に必要な形で接していない土地は、建物の建築が制限される場合があり、対応できる会社が限られます。
例えば、相続した更地に廃材が残り、境界も未確定という条件を想定します。ある会社が「廃材の撤去と境界確定を売主が済ませること」を条件にし、別の会社が「現状のまま買い取る」と提示することもあります。この場合、提示価格だけでなく、撤去・測量の負担と、それらが完了しなかった場合の扱いまで比べなければ、有利な提案は判断できません。
共有地全体を売るには原則として共有者全員の合意が必要で、自分の共有持分だけを売る場合は買取先や価格の条件が異なります。また、農地は農地法による許可などが必要になる場合があり、会社が購入を希望しても自由に譲渡できるとは限りません。農地については所在地の農業委員会に、必要な手続きと譲渡の可否を相談する必要があります。
査定額だけでなく、費用控除と契約上の責任を比べる
依頼先を見極めるには、同じ土地資料と条件を各社へ伝え、書面で回答をもらうと比較しやすくなります。特に、次の項目は査定額と切り離さずに読み合わせてください。
- 買主になる会社の名称と、査定額が変わる条件
- 測量・残置物撤去などを誰が手配し、誰が費用を負担するか
- 価格から控除される費用の内訳と金額、未確定費用の扱い
- 契約・決済の予定日と、調査結果による延期や解除の条件
- 引渡し後に問題が見つかった場合の責任範囲と期間
最後の項目に関係する「契約不適合責任」とは、引き渡した土地が契約で定めた内容に適合しない場合に売主が負う責任です。買取会社が相手でも、自動的に免責されるわけではありません。地中埋設物や境界の問題など、把握している事情は伝えたうえで、何を現状のまま引き受け、どこまで売主の責任を免除するのかを契約書に明記してもらいます。
高い査定額でも、現地調査後の減額や売主負担の工事が条件なら、その金額だけでは選べません。「どの状態で、いくらで、いつ引き渡せる提案なのか」が書面で具体化されているかを基準にすると、依頼先を絞りやすくなります。
買取価格がそのまま手取りになるとは限らない|相続登記から決済までの手順
相続土地の買取価格は、そのまま手取りになるとは限りません。仲介不要の直接買取でも、相続登記や契約に伴う費用、条件によっては測量・撤去費用がかかり、売却益が出れば税金も生じます。売却は、権利関係の整理、相続登記、査定、契約、決済・引渡しの順を基本に進め、代金から差し引かれる費用と、別途支払う費用を分けて把握すると資金不足を防ぎやすくなります。
売却準備から決済まで|名義と必要書類を整える
まず、登記事項証明書で登記名義人、共有持分、抵当権などの担保権を調べます。被相続人名義のままなら、戸籍などで相続人を確定し、遺言書や遺産分割協議書に基づいて誰が土地を取得するかを整理します。相続放棄を検討中の場合は、売却手続きを進める前に、その判断を済ませる必要があります。
- 登記事項証明書、公図、境界確認書・測量図、固定資産税の課税明細書など、手元にある土地資料を集めます。共有地全体の売却なら、共有者の売却意思と契約への参加方法も整理します。
- 土地を取得する相続人への名義変更である「相続登記」を申請します。必要書類は相続の状況で異なるため、管轄の法務局や依頼する司法書士に不足書類を照会します。
- 資料と現地の状況に基づいて査定を受け、価格・引渡し条件を固めて売買契約を結びます。査定相談は相続登記と並行して進められますが、登記の完了時期を決済日と調整します。
- 契約で定めた測量や撤去などを済ませ、決済日に残代金の受領と買主への所有権移転登記の申請、引渡しを進めます。抵当権が残る場合は、その抹消に必要な手続きも組み込みます。
相続人間の協議や境界確認に時間がかかる土地では、売主だけで引渡し日を確定できないことがあります。契約前に、司法書士や測量を担当する土地家屋調査士などへ必要な工程を聞き、実行可能な日程に落とし込みます。
手取り額の計算例|決済時の受取額と税引後の金額を分ける
費用は、何を行うか、誰に依頼するかで発生条件が異なります。相続登記では原則として登録免許税がかかり、司法書士に依頼すれば報酬も必要です。測量費や残置物の撤去費は、実施の必要性と契約上の負担者によって変わります。紙の売買契約書には、記載金額などに応じて印紙税がかかります。
仮に売却代金が300万円、売主が負担する登記関連費用が10万円、測量費が40万円、撤去費が20万円で、これ以外の費用がないとします。この場合、税金を差し引く前の手取りは「300万円-10万円-40万円-20万円=230万円」です。いずれも説明用の仮定額であり、費用の相場を示すものではありません。
この230万円と、決済日に振り込まれる額は一致しないことがあります。測量費などを先払いしていれば決済時の受取額は多く見えますが、土地を手放すための総支出は減りません。また、買取価格に撤去費などが既に反映されている場合は、同じ費用を二重に差し引かないよう、精算明細と見積書を突き合わせます。
相続登記の期限と譲渡所得税|申告まで見据えて資料を残す
相続登記は、原則として相続による所有権の取得を知った日から3年以内の申請が必要です。制度開始前の相続には経過措置があり、遺産分割が成立した場合には別途その内容を反映する登記の期限もあるため、相続時期と協議状況を法務局へ伝えて期限を確かめます。「相続人申告登記」という申告義務を履行するための制度もありますが、それだけで売却に必要な所有権の登記が整うわけではありません。
売却時の譲渡所得税は、売却代金全額にかかる税金ではありません。原則として、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた利益を基に計算します。相続した土地は被相続人の取得費や取得時期を引き継ぐため、古い購入契約書や領収書も探しておきます。手取り計算で差し引いた支出が、税務上もすべて控除できるとは限りません。
取得費の資料が見つからない場合の計算方法や、相続税の一部を取得費に加算できる特例には、それぞれ適用条件があります。売買契約書、取得時の資料、費用の領収書、相続税の申告資料をそろえ、税務署や税理士に申告の要否と見込税額を相談してください。決済後に納税資金が不足しないよう、最終的な手取りは税額の見込みまで含めて判断します。
売れない相続土地はどうする?国庫帰属・隣地への譲渡・寄附の条件を確認する
買取を断られたり、価格が付かなかったりする相続土地は、相続土地国庫帰属制度の利用、隣地所有者への譲渡、自治体への寄附が次の選択肢になります。ただし、国には審査と負担金があり、隣地所有者や自治体にも引き取る義務はありません。「引受けを妨げる条件」と「手放すまでに必要な費用」を分けて調べると、実現可能な方法を絞れます。
相続土地国庫帰属制度の対象を確認する|建物・担保権・境界の条件
相続土地国庫帰属制度は、相続や相続人への遺贈で取得した土地について、一定の条件を満たせば国に所有権を移せる制度です。相続放棄とは異なり、相続した土地を対象に申請できます。ただし、共有地では共有者全員での申請が必要になるなど、取得経緯や所有関係にも条件があります。
建物がある土地、抵当権などが設定されている土地、境界が明らかでない土地や所有権の範囲に争いがある土地などは、その状態では申請できません。また、申請できても、管理を妨げる地上の工作物や地下の埋設物、危険な崖などがある場合は、審査で承認されないことがあります。単に「更地で売れない」というだけでは、国が引き取れるとは判断できません。
例えば、買取を断られた土地でも、建物や担保権がなく、境界が明らかで争いもない相続した更地なら、国庫帰属の相談候補になります。一方、古い物置が残っていれば、まず撤去の必要性と費用を調べることになります。これは条件を示す仮定例であり、撤去すれば承認されるという意味ではありません。
国庫帰属の費用を調べる|審査手数料・負担金・事前整備を分ける
国庫帰属には、申請時の審査手数料と、承認後に納付する負担金が必要です。負担金は国が管理するための費用で、土地の区分や面積などによって算定方法が異なります。審査手数料は不承認になっても返還されないため、申請前に対象となる見込みを相談する意味があります。
さらに、建物の解体、残置物の撤去、境界を明らかにするための調査などが必要なら、その支出も加わります。一律に測量や整備を発注するのではなく、土地の所在地を管轄する法務局の担当窓口に、登記事項証明書、公図、現況写真などを示し、必要な資料と対応範囲を相談してください。手数料・負担金の額や算定条件は、法務省の制度案内と窓口で申請時点の取扱いを確かめます。
承認された段階では、まだ所有権は国へ移りません。負担金を期限内に納付した時点で国庫に帰属するため、それまでの管理費も含めて予算を見積もる必要があります。
隣地への譲渡や自治体への寄附は受入条件と管理負担を整理する
単独では使いにくい土地でも、隣地所有者には敷地の拡張などの利用価値がある場合があります。隣地への譲渡は、相手と直接合意できれば仲介不要で進められますが、無償でも受け取ってもらえるとは限りません。境界の状況、利用目的、登記費用などの負担を提示し、相手に取得する意思があるかを先に打診します。
無償譲渡では、受け取る側に贈与税などの税負担が生じる場合もあります。価格を付けないから費用もかからないとは考えず、契約内容と税務上の扱いを整理する必要があります。相手の受入意思が固まる前に、高額な整備費を支出するのは避けたいところです。
自治体への寄附も、公共目的での利用見込みや維持管理の負担などを踏まえて受入れが判断されます。「不要な土地だから」という理由だけでは難しく、道路や公共施設用地として使える可能性があっても、個別の審査が前提です。所在地の自治体の財産管理担当などに、土地の位置・面積・現況・権利関係を伝え、寄附を受け付ける条件と相談先を尋ねます。
隣地所有者や自治体から前向きな返答があっても、打診や口約束だけで管理負担がなくなるわけではありません。契約で所有権の移転時期、引渡し、登記手続き、費用負担を定め、それまでは草刈りや危険防止などの対応を続ける前提で進めます。
よくある質問 (FAQ)
Q: 相続放棄するか迷っている段階で、土地の査定を頼んでも大丈夫ですか?
A: 価格を調べるための査定依頼だけなら、通常は土地の処分とは区別されます。ただし、売買契約の締結や代金の受領まで進めると、相続を承認したと扱われるおそれがあります。放棄を検討中と伝え、契約前に弁護士へ相談してください。
Q: 共有で相続した土地は、自分だけの判断で買取を依頼できますか?
A: 査定の相談はできますが、土地全体の売却には共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけを売る方法もあるものの、買取先が限られ、土地全体を売る場合とは価格条件も異なります。登記事項証明書で持分を確かめ、共有者の売却意思を整理してください。
Q: 仲介不要の買取なのに、紹介料や事務手数料を請求されることはありますか?
A: 買取会社との直接契約でも、仲介手数料以外の費用が提示される場合はあります。「仲介不要」は諸費用ゼロという意味ではありません。請求元、作業内容、金額、査定額からの控除の有無を見積書で確かめ、説明のない費用は契約前に質問してください。
Q: 古い土地で購入時の契約書が見つからない場合、売却できますか?
A: 購入時の契約書がなくても、直ちに売却できなくなるわけではありません。ただし、譲渡所得税を計算する際に取得費を示せず、税負担が変わる可能性があります。売買代金の振込記録などを探し、取得費として使える資料を税理士や税務署へ相談してください。
Q: 相続放棄が受理された後、草刈りを求められたら断れますか?
A: 放棄が受理されたことだけで、すべての対応が不要になるとは限りません。放棄時に土地を現に占有していた場合は、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務が残り得ます。請求の理由と自分の管理状況を整理し、弁護士に対応範囲を相談してください。
Q: 相続した土地が農地でも、不動産会社に直接買い取ってもらえますか?
A: 農地は買主の要件や利用目的に応じた許可などが必要で、不動産会社が自由に買い取れるとは限りません。登記上の地目だけでなく現況も判断に関わります。所在地の農業委員会に売却後の用途を伝え、必要な手続きと取得条件を調べてから買取を相談してください。
最後に
相続土地を手放す方法は、土地以外の財産も相続するかどうかで分かれます。相続放棄の期限を先に整理し、相続する場合は、仲介不要の直接買取などを引受条件と手取り額で比較することが判断の基本です。
この記事のポイント
- 1. 土地だけを相続放棄することはできない
預貯金などを残したい場合は、土地の売却などを検討します。土地の管理負担だけでなく、借金を含む遺産全体を引き継ぐかで判断してください。 - 2. 相続放棄を検討するなら、期限と処分行為に注意する
申述期限は原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です。売買契約などは相続を承認したと扱われるおそれがあり、放棄後も占有状況によって保存義務が残り得ます。 - 3. 仲介不要の直接買取は、価格と引受条件をセットで比べる
不動産会社が買主となる方法ですが、すべての土地が対象になるわけではありません。境界や残置物などの条件に加え、費用控除や契約上の責任も比較材料にします。 - 4. 売却価格ではなく、費用と税金を踏まえた手取りで判断する
仲介不要でも、登記などの費用がなくなるわけではありません。名義・共有関係を整理し、決済時の受取額と、税負担を考慮した金額を分けて見通してください。 - 5. 売れない土地も、無条件で引き渡せるわけではない
相続土地国庫帰属制度には審査と負担金があり、土地の状態によっては利用できません。隣地所有者への譲渡や自治体への寄附も、相手の受入条件を満たすことが前提です。
次の一歩として、土地以外の遺産・借金、相続開始を知った日、土地の名義と共有者を一枚のメモにまとめ、相続放棄を検討する必要があるかを整理してください。